全日本弦楽コンクール

一般:O56の部・飯塚宏さん

一般:O56の部で優勝した飯塚宏(いいつか・ひろし)さんは、7歳からヴァイオリンを習い始め、その後13歳まで先生についてレッスンを受けていました。その後は、高校生の時に学内外の文化祭や芸術祭に参加するなどしたことがあったほか、大学生の時には一時期学内の管弦楽団に在籍していたといいます。社会人になってからは、職場の余興や音楽仲間の集まり等で演奏することはありましたが、基本的には個人で楽しんでいたそうです。2年ほど前に前職(裁判官)を退職し、新たな仕事(公証人)に就いたのを契機に、レッスンを再開し、現在に至っています。2024年日本奏楽コンクールアマチュア部門第3位入賞に続き、今コンクールで優勝をした飯塚さんに、受賞の喜びや現在の活動などについてお聞きしました。

知人の結婚式で演奏する飯塚さん

ヴァイオリンを始めたきっかけは、母親が音楽が好きだったから。3人きょうだいでお兄様と一番下の飯塚さんがヴァイオリンを習っていたそうです。大学生の時には、学内の管弦楽団に参加学内での演奏会もあり、仲間と楽しく演奏していたそうです。

社会人になってからは、裁判官仲間の送別会や歓迎会でヴァイオリンを弾いていた飯塚さんですが、裁判官を退職し時間ができたことをきっかけに、第2の人生という思いでヴァイオリンを本格的に習い始めたそうです。

音楽仲間とのホームパーティ

2024年の日本奏楽コンクールアマチュア部門はつい最近終わったばかりという飯塚さん。力をつけるために他にもさまざまなコンクールに参加しているそうです。昨年もエントリーし、奨励賞を受賞。アマチュアの中にも上手な人がたくさんおられ、大いに刺激を受けました。今年は、アマチュア部門の再編があって年齢別となったこともあり、幸いにも最高位を受賞させていただき大変光栄に思っていると笑顔で話してくれました。

長年ヴァイオリンに接していると、レパートリーは増えてきますが、ともすると弾き散らかして自己満足に終わってしまうこともあります。1つの曲を人前で演奏できるレベルに仕上げて自分を追い込むには、コンクールに出場し、客観的に評価していただくのが一番いいと思い、出場を決めたとのこと。

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判事補時代(33歳)留学先のカナダにおいて指導教授のピアノとデュオ

審査員からは優しいコメントをいただきました。アドバイスいただき、アドバイスに気をつけて弾くようにしました。最高位をとった曲は、美しい曲でとても好きな曲だそうです。本番は緊張しましたが、気持ちよく弾けたのはよかったです。コンクールに参加する方は若い方が多く技術的にも優れた方が多いのでとても良い刺激になりました。素晴らしいステージで気持ちよく弾けることは、めったにない機会なので、なるべく参加したいと思っています。

コンクール直前の独特の緊張感はなかなか他では味わえないものがあると語る飯塚さんですが、将来プロになることが目的ではないので、つらいと思ったことは全くない。コンクール直前の独特な緊張感、そのたびに出場を後悔するのに、終わった瞬間またやりたいと思う。緊張感を楽しんでいますと笑顔で答えてくれました。

コンクールのための動画撮影(伴奏者中川愛梨さん)

今の仕事は、時間で決められているので、夜や休日は存分に練習できます。早朝は誰もいないので心置きなく弾けるけれど、夜はミュートで練習しているので、もどかしさもありますが仕方ないです。今は職場と同じビルに入っている音楽教室で、月3回ヴァイオリンのレッスンを受けている飯塚さんですが、一人で練習していると気づかない癖や問題を指摘され、改善の糸口や練習方法等を教えていただき、大変有益であるといいます。職場にも楽器を置いておき職場での早朝練習(ただし20分程度)、帰宅後の深夜レッスン(約1時間)は欠かさないよう努力していると言います。

「ヴァイオリンの魅力は、いろいろな音色が出せる幅の広さ。ヴァイオリンは、自分で音程や音色を作り出す楽しみがあり、いろいろな表現を可能にしてくれる。昔のバイオリニストの演奏の動画を見たり、CDで聴いていますが、みんな個性的。同じ曲を弾いても演奏者によってかなり変わります」と嬉しそうに語る飯塚さんです。

今現在も、そしておそらく将来もアマチュアのオーケストラ等に所属することは特に考えていませんと言います。細々ながらヴァイオリンを続けていければと願っていて、小さなソロリサイタルを開くことが将来の夢だと語ってくれました。

ヴァイオリンは、自分で音程や音色を作り出す楽しみがあり、いろいろな表現を可能にしてくれますが、その反面、その表現の幅は無限で、それゆえに技術的にも大変習得が難しい楽器であることを痛感しています。子供のころから慣れ親しんでいる楽器とはいえ、一朝一夕に思い通りに弾きこなすことが難しい楽器。そのため、日ごろの基礎練習が大切で、それ抜きに上達はあり得ないと思っています。練習なくして上達はなく、しかし練習すれば直ちに上達するものでもない。ただ、少し前には演奏に手こずっていたパッセージが、しばらくして改めて弾いてみたら、その部分を練習していたわけではないのに、難なくクリアできていたという経験は何度もあり、そんなときは底知れぬ喜びに満たされます。その間に基礎練習したことで応用が利くようになった、こういった場面が長続きの理由なのでしょう。アマチュアとして、今後も自分が楽しみながら続けられるよう、日々の練習を重ねていきたいと思っています」と熱く語ってくれました。

基礎練習の大切さを語る飯塚さん。これからもさまざまなコンクールで素敵な音色を聞かせてくれそうです。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは8月に行いました。

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