全日本弦楽コンクール

一般:U55の部・西本琢人さん

一般:U55の部で優勝した西本琢人(にしもと・たくと)さんは、父親がチェロを演奏していて、息子にもチェロをやってほしいという願いから8歳から始めたそうです。姉もチェロを演奏していて、コンクールなどに入賞していたので、小さいころから音楽をやるのが当たり前の環境があったと答えてくれました。今は、6歳の長男がピアノを習っています。綿々と引き継がれた音楽の血を感じる西本さんに、今回の受賞の喜びや将来の夢などを語っていただきました。

小学生の頃の発表会で

「チェロの音色は、【温かみ】と【豊かさ】が特徴です。 低音域では、深く、力強い響きを持ちながらも、決してざらつくことなく滑らかです。このため、聞く人の心に響くような感動を与えることができます。 中音域では、歌うようなメロディーを表現することができ、感情豊かなフレーズが可能です。高音域では、明るくクリアな音色で、バイオリンに近い表現力を持ちますが、より温かみのある響きが特徴です」と嬉々として話す西本さんからはチェロへの愛が伝わってきます。

「チェロは人の声に似ていると言います。心を込めて演奏することで、音色もよくなっているようで、練習しがいがあります」と話します。応募のきっかけは、昨年のアマチュア部門最高位の方の演奏をYouTubeで拝見し、素晴らしいと思い、アマチュアで仕事をつづけながら、ここまで演奏できることに尊敬の念を覚えました。こんな人になりたいと思い、応募しました。

今回の受賞について、「受賞できると思ってなかったので驚きました。嬉しいです。今回のコンクールには今教えてもらっている先生には内緒で応募しましたが、受賞をとても喜んでくれました。内緒で応募したことは怒られましたが(笑)」と苦笑しながら話してくれました。

今回選んだ曲について伺うと、「作曲家が若いときのもので、技巧的にもむずかしいもの。いわゆるクラシックの定番ではないのですが、とてもパワフルで魅力的な曲です。審査員の先生からもその曲に挑んだ姿勢やその曲についての理解が優れていると言われたのがうれしかったです」とお話ししてくれました。

「演奏本番のときは、とても緊張していました。曲に身をゆだねて我を忘れるように体当たりで演奏しました。その結果、優勝できたのはとても驚きました。妻もチェロを弾いているので、自分より家族みんなが喜んでくれて、うれしかったです」というご家族思いの西本さんです。

中学高校とバトミントンに熱中し、チェロからは離れていましたが、大学に入ってオーケストラ部に入ってからは、ずっとチェロを続けていた西本さん。「大学時代は、チェロと常に一緒にいた気がします。中学高校時代もチェロを少しでも弾いていればよかったと少し後悔はしています。卒業して公務員になり、2年ほど東京に赴任したのですが、その頃は忙しすぎてチェロからは離れざるを得なかったです」と残念そうに話してくれました。

ふだんは、公務員として働きながら、休日に地元の長崎で市民オーケストラに入っているので、土曜日にはそこで演奏します。公務員としては現場が中心の仕事なので、なかなか練習時間を見つけるのは大変ですが、演奏するのがとても楽しいので少しでも時間をつくって練習しています。

働きながらであり、子供もまだ3人とも小さいので、早朝や帰宅後など毎日20分程度の空いた時間に練習し、休日に集中的に練習するという西本さん。演奏するのが大好きなので、なるべく時間を空けないように、自宅で練習しています。自宅では防音室がないので、時間は選びますが、できるだけ練習する時間をつくるようにしています。

今まで大変なことなどがあったかという質問には、「楽器を弾いていて苦しさや辛さを感じたことはありません。練習するのは好き」と答えてくれました。本当に演奏するのが好きなのですね。

「昨年1月に先生の勧めでリサイタルを行いました。反省点もありましたが、たくさんの人に自分の演奏を聞いていただけたことで糧になりました。たぶんその体験がなかったら、今回の受賞はなかったと思います。今は仕事や子育てなどでなかなか難しいですが、また機会をつくってコンサートは行いたいと思います。今年から仕事が忙しくなり、まだ次の目標を立てていないが今後考えたい。特にリサイタルはできたらやりたい。今は長男がピアノを習っていて子育てが落ち着いたら妻も一緒に演奏できたらいい」と将来の夢を語ってくれました。

「仕事を持ちながら、演奏を楽しんでいることで、仕事にもいい影響を感じています。今は仕事で鬱になったりする人も多いので、リフレッシュする時間や楽しい時間が持てているのはチェロのおかげです。仕事が落ち着いて子育ても一段落したら、また練習時間も確保しやすくなるので、意欲的に練習し演奏していきたい」と笑顔で話してくれました。

自身で開催したソロコンサート

仕事もチェロも楽しんでいる西本さん。また、次のソロコンサートはきっと今の何倍も成長し、みなを楽しませてくれると思います。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは8月に行いました。

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