全日本弦楽コンクール

幼児部門
足立弦さん

幼児部門金賞は、名古屋市にあるEnishi International School 幼稚部に通う足立弦さん。普段は、ポケモンや恐竜、危険生物の絵を描くのが好きな5歳ですが、本選のステージでは堂々とした演奏で、ホールに音を響かせました。ご自宅から、お母様と一緒にインタビューに答えてくれました。

足立弦さん

弦さんがヴァイオリンをはじめたのは、3歳のときです。音大に進学してヴァイオリンを学んでいたお母さんが、「自分の子どもが3歳になったら習わせたい」と思い描いていたことがきっかけでした。弦さんの名前も、ヴァイオリンから名づけました。
弦さん自身は、ヴァイオリンをはじめたころのことは覚えていませんが、嫌がることなくレッスンに通っていたと言います。ただ「なかなか集中してヴァイオリンを見ることができなくて、いつも窓の外を見ていた」とお母さん。「いまでも、よく先生から『戻ってこーい!』と言われるんです(笑)」

ヴァイオリンをはじめた当初からコンクールに挑戦し、月に一度はコンクールや発表会などのステージを踏んできました。大きなホールで弾くことには慣れていますが、今回の本選は「緊張したけど、気持ちよかった」と弦さんは振り返ります。ボーイングやビブラートなど、普段から練習を頑張っているところも、うまくいきました。お母さんは、「いつもすごく楽しんでホールで弾くので、みんなに聴かせる場をたくさん作ってあげたい」と考えています。

今回の予選の動画審査については、抵抗はなかったものの、いい演奏の動画を送りたいという思いが強いほど終わりはなく、「これが最高」というよりは「これでいい」という妥協点を見つけてのエントリーでした。だからこそ、予選結果はドキドキで待ち、通過したことがわかると喜んで、こんどは本選1位という結果に大喜びしました。
緊張から力んでしまった部分もありましたが、「こうするともっといい音になるよとか、ほんの1分程度の演奏だったにも関わらず、先生方が的確に改善点を指摘してくださって、勉強になりました」と、審査員からの講評も印象に残っています。

普段は2人の先生から指導を受けています。1人は、今回の審査員も務めた植村太郎先生です。弦さんは、先生の音が大好き。「太郎先生のヴァイオリンは、きれいで、やさしくて、かっこいい音。大人になったら、そんな音を出したい」と憧れています。
「ヴァイオリンは、怒ったり、嬉しかったり、悲しかったり、静かな音とかオバケの音とか、いろんな音が出せるから楽しい」と弦さん。3歳ではじめたころから、どんなときでも毎日必ず練習をしています。家族で行く旅行先にもヴァイオリンを自分で背負って行って、「海で弾いたり、牧場でたくさんの牛さんに聴いてもらったり。外で弾くのは気持ちがいい」と話します。どんな場所でも弾くことができる。その点、ヴァイオリンは持ち運びしやすい楽器です。

青空の下で

観客は牛さん

お母さんは「言葉がなくても音楽で表現できることがある。音楽と一緒にいろんなところへ行くことができる。生きていく上で、それがひとつの支えや自信になれば」と考えています。いまは息子である弦さんと、「音楽で繋がれていると感じます。こんなふうに、言葉をかわす以外の時間を一緒に過ごせるのは素敵だなと思います」。

弦さんは、3歳の弟とヴァイオリンを弾く時間も好きです。時には、音や弾き方を教えてあげたりして、先生になることも。「曲を一緒に弾けると楽しい」と弦さん。弟と一緒に世界のいろいろなところで演奏するのが、将来の夢です。

弟と一緒に世界へ

最後に、ヴァイオリンをどれくらい好きか、たずねると「100%、好き」と即座に答えました。恐竜の図鑑を読んだり、ポケモンをマネして描いたり、危険生物を描いて戦わせたりするのも好きだけれど、やっぱり、ヴァイオリンが大好きで大切な存在です。

 

どこでも演奏できるということを知ってもらうために、旅行先にも楽器を持っていき、外の空気を吸いながら演奏する環境づくりをしてきたお母様の姿勢は、とても素敵です。弦さんも、型にはまることなく、伸び伸びと楽器を楽しむ様子が伝わってきました。世界のいろんなところで、いろんな人たちが弦さんの演奏を聴くことのできる未来。楽しみですね。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは3月上旬に行いました。

本選での足立弦さんの演奏はこちら